2025/07/22 11:48

眼鏡の歴史は、視覚を補助する道具としての人類の工夫と進化の歴史でもあります。最も古い視覚補助具は古代ローマ時代にまで遡り、皇帝ネロがエメラルドの石を通して闘技場を観ていたとされる記録があります。これが「視力補助」の概念の萌芽ともいえるでしょう。
本格的な眼鏡の誕生は13世紀後半のイタリアと考えられています。1290年代には、凸レンズを用いた読書用の道具がヴェネツィアで使われていたという記録があり、修道士や学者たちが手で持ちながら使用していました。これが「眼鏡」の原型とされ、当初は老眼を補うためのものでした。
15世紀になると印刷技術の発展に伴い、読書をする人が増加し、眼鏡の需要も高まりました。16世紀には、近視用の凹レンズ眼鏡が登場し、視力補正の幅が広がりました。また、眼鏡の形状も改良され、耳にかける「つる付き」のデザインが17世紀に登場しました。
18世紀には眼鏡の大量生産が始まり、技術が進化する中で視力検査の方法も発展していきました。19世紀後半には眼鏡店が登場し、専門家による視力測定と度数に合ったレンズの提供が一般化します。また、眼鏡は医療器具としてだけでなく、ファッションの一部としても認識されるようになりました。
20世紀に入ると、プラスチックレンズや軽量なフレーム素材の開発が進み、機能性とデザイン性の両立が可能に。コンタクトレンズやレーシックといった選択肢も生まれましたが、眼鏡は依然として多くの人にとって日常的な視力補助具として利用されています。
今日では、眼鏡は視力矯正だけでなく、ブルーライトカットやUVカット、ファッションアイテムとしての役割も担い、さらに進化を続けています。眼鏡の歴史は、視覚と人間の文化の深い結びつきを物語っているのです。